Nakamichi MB-V300sというCD試聴機があります。3枚のCDを入れ替えて試聴することができるだけでなく、セットされているCDのレーベル面が窓から見えるという特徴的な意匠の機種です。2000年頃にはあらゆるCDショップの店頭で見かけましたが、CDメディアの退潮に伴い最近では目にすることが少なくなりました。ちょうど動作する個体を1台入手できたので、机に置いて使えるようにスタンドを後付けすることにしました。
1.調査
1.1純正スタンドの調査
1.2筐体実測
業務用機材らしく、試聴機の本体には工事やアクセサリ取付用の穴が豊富に用意されています。Web上の画像から推測するに、側面と底面にあるネジ穴はゴム足取付用、背面にあるネジ穴はヘッドホンハンガーの取付用のようです。取付方法を検討するため、穴位置を実測した結果は図の通りです。
筐体の板厚は塗装込みで1.2mmでした。純正の傾斜スタンドに当て板が付いているのはこの板厚の薄さを補う目的もあるようなので、ひとつの穴に力が集中するようなつくりはやめたほうがよさそうです。2箇所あるヘッドホンハンガー穴は不用意に使うと内部の基板にネジの先が接触しそうなのと、板金筐体に切られたM3ネジ穴で数kgの筐体を支えるのはやや心細いので利用は避けます。底面のゴム足用のネジ穴は想定用途通りにゴム足を固定して使えそうです。
2.設計
2.1構造の検討
固定の目処が立ったので、スタンドの作り方を検討していきます。当初は筐体を書見台に載せて使い心地を確認していたので、その延長でiMacのスタンドのような板金構造を考えていました。しかし、板金構造は強度は出るものの設計変更の都度製作を外注する必要があり、トライアンドエラーに時間がかかる2ため、まずは3Dプリントでスタンドを作り、行き詰まったらあらためて板金構造を考えることにしました。
2.2スタンドの設計
3Dプリント部品は、なるべくコンパクトかつオーバーハングのない形状に近づけて設計することで安定して短時間で出力できます。今回設計した部品は横向きの穴があるので厳密にいえば多少のオーバーハングはありますが、通常の3Dプリンタならばサポートなしで出力できます。場合によってはボルトを通すためにドリルで穴をさらう必要があるかもしれません。
スタンドの取付にはAmazon等で安価に購入できる穴あきネオジム磁石を使用します。割れるとスタンドが脱落するおそれがあるため、ヨーク付きのものを選定しました。スペック上は8kgfの吸着力があるようですが、筐体重量が3kgあることを考えると面内の滑りを止めるにはやや心もとないので、キャップボルトの頭が筐体の穴と噛み合うようにして面内の滑りを止めます。筐体の穴径は6mm、M3キャップボルトの頭径が5.5mmなので、ボルトの頭間の寸法が出ていればこの方法で吸着固定が可能です。
2.3スタンドの横への脱落防止
磁石固定によりスタンドとして最低限機能するようにはなりましたが、試作したところこの脚は横に倒そうとする力に弱く、筐体に物をぶつけるなどして大きめの力がかかると外れるおそれがあることがわかりました。このため、脚どうしを梁で結合して倒れないようにします。梁も工具レスで取外し可能にしたいので、手で回せるねじで脚と梁を結合する構造としました。都合のよい長さのめねじつきの棒を得るためにはパイプカッターとタップが必要になるため、今回はM3x120スタッドボルトの両端に金属スペーサーを付け、二重ナットの要領で固定して目的の長さに合わせました。
3.結果
ゴム足などの部品と一緒に本体に取付けた結果は前掲写真の通りです。組立ては脚を本体に取付けてから梁をネジ止めすることで行え、所要時間は1-2分です。分解は逆の手順で行います。
梁があることにより、横方向に力をかけても足が剥がれなくなりました。試してはいないものの、力をかけると先に梁が変形しそうに見えます。脚よりも本体のほうが高価で入手性が低いので、脚が先に壊れるのは望ましい方向性だといえます。細い梁の見た目はあの時代のプロダクトっぽくて気に入っています。磁石はワンサイズ下げてもよいかもしれません。
目下の問題は、透明PETGの見た目が安っぽいことと、ゴム脚を机に擦ると黒い跡が残ることでしょうか。前者は商用の3Dプリントサービスの利用により、後者は非移行性のゴム脚の採用により対策できそうです。




